こんにちは、フォースタートアップス株式会社のエンジニアの八巻(@hachimaki37)です。主にタレントエージェンシー支援システム(SFA/CRM)のシステム開発を担当し、フルスタックに開発を行なっております。
ここ最近は、エンジニアリング以外にもスクラムや開発生産性、チームビルディングといったキーワードに興味があり、試行錯誤しながらさまざまな施策を練って進めております。今回は、所属チーム(以下、チーム)のエンジニアが中心となり、チームのコアバリューを創りました。 チームのデザイナー @Minmi303 さんに作成頂きました!
背景をはじめ、なぜコアバリューなのか、どんな課題があり、どのように計画してコアバリュー創りを進めていったのかなどについて紹介していきたいと思います。
本題に入る前に少しインスピレーションを掻き立てていきます。以下、3つの画像が登場します。あなたは、これら画像を見て何を思いどのようなことを感じますか。
①
②
③
お付き合い頂きありがとうございます。まず最初にお伝えしたいことは、これら画像を見て一人ひとりの感じ方は違うかもしれません。その所感そのものは、一人ひとりが持つ価値観であり、十人十色で素敵なものだと考えています。
一方で、多様な価値観があることも事実です。
①
中国の一部の地域では、食べ残すことで「満腹・満足」を表現すると言われております。綺麗に残さず食べるのではなく、一口分程度残すことで「食べきれないほど十分に料理を提供して貰い、満足だった」という気持ちを表します。
②
英国では、日本円でいう1万円札のような額が大きいお札を出すと怪訝な顔をされることがあります。場合によっては、断られることもあります。
③
サハラ砂漠のような乾燥した地域では、雨がふれば恵みの雨。つまり、「いい天気」を指します。
極端な例かもしれませんが、我々は多種多様な価値観と共にプロダクト開発を行う必要があると考えております。
お待たせしました。それでは、本題に入ります。
目次
チーム
- PdM: 1名
- Engineer: 3名
- SRE: 1名
- Designer: 1名
計6名のチームです。小規模なチームのため、PdMが開発Issueを取ったり、エンジニアがプロジェクトをリードしたり、SREがフロントエンドのIssueを取ったりと、ポジションはあれど横断的に開発を進めています。
背景
価値観の向き先が一人ひとり異なる中、チームは力を合わせてプロダクトやプロジェクト、ビジョンに向かって突き進まなければなりません。なかなか酷じゃありませんか?
なぜなら、
- 人によって善意、良し悪しが異なる
- 人によって優先順位やベクトル、志が異なる
- 尚且つ、培ってきた経験が異なる
そんな十人十色の価値観の状況下で、チームはプロダクト開発をしていかなければなりません。だいたいあるのは、全社のMission Vision Valueです。少なからず弊社はそうでした。
プロダクト開発のチームに属する者として、どんな志を持ち、どのようなふるまいを行い、日々どのような意思決定をしていけば、目指す先へ少しでも近づくことができるのだろうか。そんなことを考えながら個人ではなく、チームとしての「明確でぶれない、共通認識の価値観」を創り、皆で同じ方向に向かっていくことが必要なのではないかと考え、推進して参りました。
コアバリューとは
コアバリューと言えば、Zapposではないでしょうか。Zapposは、カスタマーサービスの神対応が大きな話題を生み、他社が真似出来ないような独自の企業文化を築いていることでも良く知られています。その独自の企業文化の軸となっているのがコアバリューです。 https://www.shikumikeiei.com/zappos-shikumi1/ https://hrnote.jp/contents/b-contents-editorial-zapposkai-180227/
では、コアバリューとは一旦どういった意味を持つのでしょうか。少し調べてみました。
- 「中核となる価値観」。人が日々生きるうえで、判断を下したり、優先順位を定めたりするうえでその「ものさし」になるものを指します。
- 企業あるいは個人が重要視する価値観のこと。個人や組織がものごとを判断するときの「ものさし」ともいえます。
- 企業が最も重要であると考える価値観であり、日々、社員が考え、行動するうえでの指標として定めるものです。
https://www.corevalue.or.jp/core-values https://www.kaonavi.jp/dictionary/core-value/ https://www.dyna-search.com/jp/core-values
「価値観」と「ものさし」がキーワードになりそうです。つまりは、ものごとの「価値基準」ではないかと私は解釈しました。
どんな課題がチームにあったのか
全社のValueがチームの価値基準になることがベストだとは思います。しかしながら、プロダクト開発との結び付きが難しいというのが現状でした。実際にあった一例を紹介します。
エラーハンドリングにて
クリティカルな問題に成り難い箇所を、事前にどこまで考慮しておくべきかといった議論で意見が分かれました。
- 必要になったら考え、実装する
- 想定できることを事前に考え、実装する
結論、着地は1でした。確か最終的なジャッジは、多数決だったような気がします。方法論の良否ではなく、どちらを選択するべきかを、どんな価値基準で議論されたかが重要だと考えます。
採用活動にて
エンジニアの一次面接(技術面中心)にて、以下特徴を持ったAさんとBさんが一次面接を通過。二次面接では、チームへのフィット感を見極め評価して欲しいといった要望を受けました。採用枠は1枠です。
▼Aさんの特徴
変化への適応とスキルアップが重要です! なんせこの業界は技術変化が多いので、変化に適応してスキルアップしていかなければいけません。そのためには、スキルアップのみならず、やり切る力を重要視しています。その結果、チーム活性化に繋がりますし全てを還元できるわけではないですが、技術面で貢献できるのではないかと考えます。
▼Bさんの特徴
貢献をはじめ、チームでより良いサービス価値を創出していくことが重要です! 変化多様なご時世では、サービス価値をいかに早くユーザーへお届けできるかが重要です。サービス価値を上げていくために必要なことを考え、自分自身が変化へ適応しスキルアップしていくことが重要だと考えます。
あなたはどんな価値基準で、どちらの方を選択し、どちらの方と一緒に働きたいですか。
なぜコアバリューがチームに必要なのか
上記ケースのみならず、日々決断と意思決定が必要です。
プロダクト開発を行う中で、議論や意見を交わすことは非常にポジティブだと考え、むしろ逆に議論がなかったり、トップダウンで意思決定されていく方がネガティブだと考えております。
「共通認識の価値基準」がない場合、これらケースは個人の価値基準 vs 個人の価値基準のぶつかり合いになります。一方が他方を理解すれば良いという問題でもありません。価値基準が自身の思想になるため、どちらかが納得する or どちらかが折れる or 折衷案の着地になることが多いと考えます。
実現したい何か(目的)がチームにあるならば、もっと「チームの中核となる価値基準」に沿って議論した方が、その何かの実現可能性は高くなっていくのではないでしょうか。
つまり、これら課題を解消する「チームの中核となる価値基準」こそがコアバリューです。個人の価値基準からチームの価値基準に置き換えることで、決断や意思決定、行動する際の価値基準を作ることができると考えています。
コアバリュー創りの進め方
どう計画し、どのように進めたのかについて紹介します。
まず重要だと考えたことは、トップダウンをはじめとする特定他者の意見、意思が詰まったコアバリューにしないことです。コアバリュー創りに対する一人ひとりの興味関心や当事者意識、チームで生み出す過程をどう設計するかなど、非常に悩み考えました。検討結果としては、ワークショップを中心に行い、共通言語としてすでに存在している「プロダクトビジョン(業務プロセスを、シンプルかつ安全に進められる仕組みを提供します)」を活用することを軸に、計画を進めていきました。
※キャプチャーを添付しておりますが、あくまでイメージを掴むために添付しております。
キックオフ
推進していく上で、実施の意義と動機付けが非常に重要です。この土台をしっかり構築することで、軌道修正を容易に可能とします。そのため、概要についての説明機会をはじめ、チームが持つ疑問の解消に努め慎重に事を進めました。
- テーマ:
- 主観からカルチャーへ。我々チームのコアバリューはこれだ!
- When
- 週一回1時間 × 4回(結果、10回に渡りました..)
- Where
- オフライン
- Who
- PdM, エンジニア中心
- What
- チームのコアバリューを定義する
- Why
- チームの価値最大化のため。プロダクトビジョン実現に向けて、チームの良し悪しおよび一体感、決断や意思決定における共通認識の価値基準を創り、皆で同じ方角を指せるようにする
- How
第一回 :個人が考える価値観に向き合う会
バリューズカードを活用しながら価値観に向き合いました。
あくまで個人が考える価値観についてです。具体的には、「1エンジニアとして、個人が大事にしている価値観」に向き合いました。
あくまで個人が考える理想的なチーム像に対する価値観についてです。ここでは、「1エンジニアとして、どういうチームが理想的かという価値観」に向き合いました。
最終的に1と2を照らし合わせながら、「チームにとって必要な価値観」を考える個人ワークを行いました。
第二回:プロダクトの価値観に向き合う会
第一回は、あくまで個人としての価値観を考えました。少しずつ個人の価値観からの脱却を目指します。ここでも、バリューズカードを活用しながら「プロダクト自身に成り切って、プロダクト自身に必要な価値観」に向き合いました。
最終的に3枚のカードを残し、なぜそう思うのかといった具体理由を記入する個人ワークを行いました。
第三回:コアバリューの原型創り
どのような価値基準を持つことが出来れば、プロダクトビジョンを実現できるのか。プロダクトビジョン実現を軸に、第一回と第二回の価値感をマージするグループワークです。ここでの重要観点は、自分達の「想い」です。私達は人間であり、感情が入り組むチームです。自分達がやっていて「楽しいのか?ワクワクできるのか?やりたいと思えるのか?」を自問自答することが重要だと考えました。
重要な価値基準をチームに創るため、第二回で行った複数の抽象的概念をより具体的にチームで議論し、類似の概念をグルーピングしました。最終的にチームの想いが集結した3つのコアバリューの原型が創られました。
第四回〜第七回:グルーピングの抽象化と命名
第三回で、コアバリューの原型を創りました。私達は、そのグルーピングした一つひとつの概念で「何を一番に伝えたいのか」。概念をもっと抽象的に捉え、一つひとつの命名を決めるグループワークです。ここで重要なことは、参加者全員で議論し決めることです。また、プロダクトビジョン実現という観点も忘れてはいけません(私は忘れかけました)。
※第5回目で、コアバリューの立ち位置はどこか?といった質問があり、「全社のMission Vision Value > プロダクトビジョン > コアバリュー」と定義しました。
チームで一番悩み抜いたことは、グルーピングの抽象化だと思います。価値基準の違いを感じながら、一つひとつの意味を考えていくことは非常に大変でした。抽象的な概念をできる限り具体的に考え、チームの共通概念を探り見つけていきました。
第八回〜第十回:コアバリューを定義する
最後のグループワークです。一つひとつのコアバリューの意図を伝えるため、注釈を考えました。今までの議論を踏まえ、チームには事前に注釈を考えて頂きスタートしました。
ここでもさまざまな議論が繰り広げられましたが、無事にチームの意思が詰まったコアバリューが完成しました🎉
最終的にmiroは何がなんだかわからなくなりましたが、チームで歩んできた軌跡です。
やってみての感想
当初の想定よりも遥かに時間を要しました。時間はかかりましたが、純粋にチームメンバーの考える価値基準に触れることができ、新たな考えを得ることができたと思っております。
自分自身の価値基準、信念を持つことは非常に重要だと考えています。まずは自分自身の価値基準に気づくこと、多種多様な価値基準があることを知ること、そして身近なチームメンバーの価値基準を受け入れていくこと、正解不正解、甲乙ではなく、そんなチームの日々の行動の積み重ねが、良いプロダクトを創るチームになっていくのではないでしょうか。
現場の声は実際どうなのか
コアバリューを創ってから約半年間が経過します。最後にコアバリューに関する意見をチームメンバーに伺いました。生の声を紹介します。
肌感ですが、コアバリューを体現できる限界数は3〜5つぐらいと考えており、多からず少なからずを計画当初に思っておりました。ポジティブな意見もあれば、私を含めまだまだ行動とのギャップには課題がありそうです。
コアバリューがチームの価値基準になり、決断や意思決定、自らが判断し行動ができるようになれば、もっとイキイキとしたプロダクト開発ができるのではないでしょうか。
次期アクションに向かってチームで推進していきます。これからがスタートです。
あとがき
最後に採用情報です。
こんな価値基準を持ったチームで一緒に成長していきませんか。ご興味ありましたらぜひ一度カジュアルにお話できたらと思います。